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『良かった。これでこの代も藤原家は安泰だ』
『本当に。このままではーーに渡るかと』
何?なんの話し?
何も真っ暗で見えないが、ざわざわと大人の話す声だけが聞こえる。
『既に相手は決めてある。後はーーを見つけるだけ』
『長く務めてもらうためにも、早く見つけて欲しいものだ』
何を見つけるの?
何故か所々よく聞こえない。
真っ暗な中でざわざわと声だけが聞こえるが、何故かその声がとても不快に感じた。
ふと側に人の気配を感じて驚いて横を見る。
そこには小さな男の子が俯いて正座をしていた。
俯いていているので顔は見えないが、膝に置いている小さな手はぎゅっと握りしめられ、小刻みに震えている。
またざわざわと声が聞こえ、その不快な声がこの男の子に向けられているものだとわかった。
『あぁ、この子はこの声に耐えているんだ』
再度必死に握りしめている男の子の手を見て、私はふつふつと怒りが湧いてきた。
何やら勝手な事を言っている相手に言い返してやりたい。
震えるこの子を守ってあげたい。
でも、何て言えばいいの?
私なんかが大人達に上手く言えるの?
未だ大人達の不快な声は消えない。
『酷い。この子が必死に耐えているのがわからないの?!』
だけど何を言い返して良いのかわからない。
だって本当はなんて言われているのかすら、きちんとわかっていないのだから。
声はどんどん大きくなる。
『このままじゃこの子が声に飲み込まれる!』
思わず男の子を抱きしめようと、私は手を伸ばした。
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