第一章 月曜日の憂鬱

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『ここ、どこ?』 白い天井がぼんやりと視界に入ってきた。 何か顔のあたりが冷たい。 「東雲!」 急に側から大きな声がした。 ゆっくりと声の方を向けば、そこには見たこともないほど途惑った顔の藤原がいた。 そして近くには葛木先生が私の手を握っていた。 その手が寝ている私の顔に伸びて、冷たいものを拭う。 そうか、私、泣いていたんだ。 「私達がわかりますか?」 葛木先生がゆっくりとした声で尋ねるのを、私はちいさく頷いた。 それを見て、藤原と葛木先生が無言で頷き合っている。 葛木先生は、ちょっと待ってて下さいねというと私の手をゆっくりと離して、白いカーテンを開けて出て行った。 「ここは保健室だ。もう大丈夫だからな」 落ち着かせるように言う藤原の声に、言葉を返そうとしたが声が出ない。 私は喉に手を当てた。 それを藤原が厳しい顔をして見ている。 私は安心させたくて小さく笑った。 そこに葛木先生がコップを持って戻ってきた。 「喉が渇いたでしょう、特製のレモネードです。 ゆっくり飲んで下さいね」 ベッドから起き上がろうとした私をすぐに藤原が支えてくれ、葛木先生から手渡されたコップをうけとる。 ぼんやりと冷えたコップを眺めた後、こくりと一口のんだ。 すぅっと身体中にとけて広がっていく感じがする。 なんて美味しいんだろう。 私は残りをごくごくと一気に飲み干した。 「良かった。 かなり喉が渇いていたんですね」 「・・・・・・はい、美味しかったです」 葛木先生にコップを渡しながら、声が出たことに驚いた。 きっと声が出ない気がしたのは喉が乾燥していたからかもしれない。
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