第五章 一輪の薔薇

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「今、藤原は家にいるんですよね?」 「はい。合鍵は持っているのですが、結界が張られて入れませんでした」 「先生は、私ならそんな中にも入れて、藤原が私の言葉を聞くとでも思っているんですか?」 「はい」 「藤原は、私が加茂君に酷い事をしないでとあんなに言ったのに、聞かなかったじゃないですか」 「いえ、聞きましたよ」 「聞いてないですよ!」 なんで未だに葛木先生は勘違いをしているのだろう。 「あなたが『大嫌い』と言って、止めたじゃないですか」 私はその何の抑揚もない言葉を聞いて、びくりとした。 「責めているんじゃありません。 あなたの言葉は、光明にとっては重い、ということなんです」 「また私は『特別』ですか? さすがに先生、思い込みすぎですよ」 「いえ、光明自身が気がついていないだけです。 私はずっとあの子の側で見てきているのですから。 だから、あなたじゃなければもう助けられないんです」
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