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「・・・・・・貴女は陰陽師の世界を知らないですから」
「だからこそ見えるものだってあると思います」
そうだ、彼女は知らないからそんなことを言うのだ。
あの京都側にすら安倍晴明の再来と言わしめた光明。
光明が何かを成し遂げる度、周囲がひれ伏していくのをずっと側で見てきた。
東京の陰陽師の長がそんなにも強く素晴らしい存在で、自分がその側近としていることが誇らしかった。
彼女が巫女であったとしてもまだ高校生。
長が強く存在するその意義を理解出来るはずもない。
「先生が、長としての藤原を維持することにしか頭にないのなら、信用出来ない」
だが彼女から向けられたものは、酷く冷たい目だった。
初めて彼女から向けられた敵意に私はどうしていいかわからない。
「何か誤解をしているのでは」
「先生は本音では巫女がいて欲しいんでしょう?」
「それは・・・・・・」
「藤原が無くしたいと行動してるのを側で見ているのに」
冷たい視線に絶えられず、私は少し顔を背けた。
そうだ、今回の事で痛いほど巫女の重要性を味わった。
光明は無くそうとしていても、きっと無くすことは出来ない、私はそうたかをくくっているのかもしれない。
光明も巫女がいて良かったと思う日が来るのではないだろうかと。
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