第一章 月曜日の憂鬱

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社会科見学が終わり、授業が始まったすぐの日、藤原に放課後呼び出された。 何事かと思えば、お前は英語の成績悪いから放課後特別に勉強を見てやる、なんて言うのだ。 だが一見面倒見良さそうな事を言うかと思ったら、そのかわり、1時間先に寝せて欲しいというよくわからない条件が提示された。 正直帰るのが遅くなるし面倒そうなので断ったのだが、その間勉強して質問事項をまとめる時間に使えばいい、他の教科もわからなければ教えてやるからとかなり強引に押し切られて、私は気がつけば頷いてしまっていた。 ある時用事を思いだして、寝ている藤原を起こさないようメモだけ置いて途中で帰ったのだが、翌日何で勝手に帰ったんだとそれはそれは非難されて思わず喧嘩したこともあった。 どうしたって寝ている1時間は側に居ろということらしい。 こういう時、長女としての気質が出てしまうのか、単に押しに弱いのか、こういうのを無視出来ず世話をしてしまう自分の性格が憎らしい。 そして一時間後に起きると、藤原は相当よく眠れたのか顔色も良くなって機嫌良く丁寧に勉強を教えてくれる。 何故こんな事を私にさせるのかはよくわからない。 もしかして毎日他の生徒でとっかえひっかえやってるの?と質問したら真っ赤な顔で否定された。 まるで女子生徒を毎日連れ込んでいる見たいに言うな!と怒られたけど、そこで初めて私にだけそういう事をお願いしているのだとわかった。 鎌倉で私が藤原の体調不良を見かけたから、気兼ねなく私には頼めるのかもしれない。 でもそんな理由でも人に頼って貰えているという事が、私には心地よく感じてしまう部分でもあった。 だからなんとなく藤原のこのお願いを拒否できず、未だにずるずるやっている理由かも知れない。 しかしさすがに本当の事を周りには言える訳もなく、あくまで藤原の仕事を手伝うというのが建て前になっているのだ。
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