第一章 月曜日の憂鬱

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「あとどれくらいですか?」 「あと20分くらいでしょうか」 私は葛木先生の問いかけに壁の時計を見て答えた。 「なら先に私たちだけティータイムにしましょうか」 そういうと先生は紙袋から荷物を取り出す。 私も慣れたように部屋の隅にある棚から紅茶のティーバッグやマグカップを準備し始めた。 奥ではぴくりともせず寝続けている藤原がいるが、余程大きな音をたてなければ起きないことを私たちは学習していた。 「どうぞ。 今日はナッツ入りのクッキーです」 「ありがとうございます。良い香り!」 アールグレイの紅茶に負けないほど香ばしいクッキーを早速頬張りながら私は思わずにやけてしまう。 「今日も美味しいです。さすが先生」 さっくりとしたクルミやアーモンドの入ったクッキーを味わいながら、私は先生に言った。 「良かったです。 やはり美味しそうに食べてくれる人がいると作りがいがありますね」 にっこりと柔らかい笑みを向けられて思わず俯いた。 顔が赤くなったりしていないだろうかとハラハラしてしまう。 好きな人に手作りのお菓子をもらって、笑みまで向けて貰えて嬉しくない乙女がいるだろうか。 ちょっと男女逆な気もするけど、私にこんな美味しいお菓子は作れないのが現実なので仕方がない。
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