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その容姿や声、性格、能力、彼女達の全ては、彼が行っていたように設定画面から自由に作り上げる事ができる。ただし、アコールを作るのは無料だが、誰もがうらやむような身体的特徴や特技を追加するなら課金が必要だ。その点、私の見立てでは、彼のアコールはボーナスが三回無くなるくらいのお金がかかっているはずだ。
男が振り向く。設定の終わったアコールが、ベッドに横たわった姿で彼の視界に現れた。安っぽい細いフレームと薄汚いマットレスの上に横たわる肢体は、見る者に背徳感を与える。上目づかいで彼の方を向き、頬を赤く染めた。
「早く、こっちに来てよ」
「あぁ」
男がベッドに膝を乗せると、ぎしりとフレームの歪む音が鳴った。アコールに寄り添ってうつ伏せになる。
これもアコールが急速に広まった理由の一つだと思うが、彼らとの関係は自由な時系列から始め、付き合うまでの駆け引きをスキップする事ができる。恋愛において、その時間を大切だと思うか、面倒だと思うかは個人の自由だが、アコールの流行を考えれば、現代では後者だと感じている人が多いのかもしれない。彼の設定は、『付き合い始めた最初のお泊り』のようだ。私の存在が気付かれていない証明にはなったが、非常にばつが悪い。
「ソフィー、愛してる」
「私も」
お互いの目を見て、ささやき合う二人。男の額には脂汗がにじんでいる。瞳孔が広がる。高鳴る心臓の音が、こちらまで聞こえてきそうだ。
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