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繰り返すが、アコールは仮想なので体を持たない。映像による感覚間相互作用によって多少の触感を得る事はできるが、過度に体重をかけると仮想である事実を痛感してしまう。男は誘惑に負けず暗黙のルールを守り、過度に彼女に接触しなかった。
情報はガセだったようだ。このままでは私は、ただの盗撮者になってしまう。ちゃぶ台の端に置かれているWEBカメラとの接続を切断しようとしたその時、チャイムが鳴った。
男は舌打ちをすると、指をはじくジェスチャーをしてバーチャルコンソールを表示した。彼の視界には、宙に浮いた枠の無い小さなモニタが映っている。コンソールには玄関に設置された防犯カメラの映像が表示されていた。
ドアの真ん前に立っているのか、日に焼けた額がドアップで映っている。揺れるパーマの隙間からは、ちらちらとスーツ姿が見え、後ろにも複数の男達が立っている事を確認できる。
男は瞬時に彼らの目的を察したようだった。赤かった顔がみるみるうちに真っ青になる。ソフィーは無邪気にコンソールの前で手を振って、ちょっかいを出していた。
「警察だ。津田隼人君、出てきてくれないか」
防犯カメラの映像に、三白眼の男の顔が映る。間髪いれずにドアが叩かれた。
「ちょっと出てくるね」
「うん。いってらっしゃい」
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