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二人のアコールを探し出す事で、本当に状況は変わるのだろうか。私には分からない。しかし自信に満ちた二人の顔を見ていると、頷いてみたくなった。
私達は電車を降りて、マンションに向かっていた。隣にはイブ。振り向けば、マリアがついてきている。後ろに向かって尋ねる。
「どこに住んでいるのか、今度は教えてもらえるのか?」
「いろいろと――。別に嘘じゃなかったでしょう。オーナーのいないアコールに、居場所はないもの」
マリアが顔の色を陰らせ寂しげに答えた。
「今までどうしていたんだ」
「姿を消したい時もあれば、徘徊したい気分の時もあるわ」
今朝車内で男達が話していた、幽霊の話を思い出した。
居場所のない世界で、六年間という長い時間を過ごす事を考える。気が遠くなる。私が彼女に与えたのは、自由ではなく呪いではないかとさえ思ってしまう。
今さら遅いかもしれないが、私はこの問いかけをする義務がある。
「うちに来るか」
「えぇ」
質問を予想していたかのような素早い返事だった。後ろ手を組んだマリアが、大股に歩を進め、私達の横に並び立つ。つい先程までの表情が嘘のように、舌を出して笑っていた。
「え。え? えぇ?!」
住宅街にイブの悲鳴が轟いた。
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