1-4. エマの銀の腕

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「私の検索に引っかかったのは、今のところ二件あるわ。思い当たるアコールはいる?」  マリアはコンソール上のブラウザのページを浮かべると、スライドさせてこちらに投げた。私は自身のコンソールで受け止めて眼前に広げた。  それは、自由に姿を変える怪盗についての書き込みだった。ある時は、愛人の姿で金持ちの家に入り込み、根こそぎ宝石を盗み出したという。ある時は、社長の姿で店舗に入り、売上金を根こそぎ盗み出したという。やっていることは間違いなく犯罪だが、その華麗な手口に惚れた熱狂的なファンが多数いるらしい。 「怪盗なんて単語を見るのは久しぶりだ。盗めるという事は金品に触れるっていう事だし、これは違うな」  違ったがインパクトは強かった。フィクションでしか目にした記憶が無い。 「やっぱり。これは?」  二枚目のページを受け取った。それは、アコールの失踪に関する記事だった。手塩にかけたアコールが、オーナーの元から立て続けにいなくなる事件があったらしい。金持ちそうな容姿の二人のオーナーが懸賞金を出して情報を求めている。一方は化学に精通したアコール、もう一方は心理学に精通したアコールだったという。 「心当たりは、無いな。これも違うと思う」 「そう」     
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