1-4. エマの銀の腕

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 マリアは残念そうに視線を落として、掲示板を検索する作業に戻った。彼女はこうしてコンソールをスクロールし続け、知識を吸収していたのだろうか。 「純粋な興味だけどさ。人の心を理解する上で、何が一番大変だった?」  意外な質問だったようで、眉間にしわを作った顔を上げた。 「欲求が理解できなかった事かしら。食事も、睡眠も、セックスも、私達には縁の無いものだから」 「なるほど。人間の行動原理に等しい三大欲求が無いのは、だいぶ高いハードルになりそうだな」  あのクールなマリアから飛び出した刺激的な言葉に、若干動揺しながらも感想を返した。彼女は再び視線を落としていたが、コンソールを触る手は止まっていた。 「――興味はあるけど」 「え?」  聞き返したのはイブと同時だった。 「健斗が好きなら、それを知っても良いと思うのよね」 「ちょっとマリアちゃん。フォーラムの時とはずいぶん違って、うちに来てからグイグイ行きすぎじゃないかな」  イブは眉間をひくつかせている。 「それは、気付いてもらうまでは他人を貫こうと意地を張っていたから。でも健斗に記憶が戻った今、遠慮する必要も無いでしょう 「あるよ。あたしが健斗のアコールなんだから」  どんどん険悪な雰囲気になりそうだったので、口を挟んだ。 「イブはアコールがいそうな場所を見つけられたのか?」     
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