1-4. エマの銀の腕

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「え、あぁうん。あたしが探したのは、これ」  手品のように手首を回して手の中からページを取り出した。貼り付けようとした私のコンソールを見て、イブが目を見開いた。そこには、マリアから送られた記事が表示しっぱなしになっていた。 「どうした?」 「ううん、何でも無い」  イブが記事をコンソールに貼り付けた。  それはブラックなアルバイトを晒す掲示板の書き込みだった。東京の西部に妙なアルバイトがあるという。不機嫌そうな顔をした女の前で、未開封の段ボールから機械部品を取り出して、ひたすら組み立てていく。彼女は細かく指示を出すが、決して自分からは手を出そうとしない。バイト代はそこそこいいのだが、女の言い方が横柄で、何人も辞めているという。 「つまり女は一度も部品触っていないって事。怪しいでしょ」  いつも通りの調子に戻ったイブが言った。  コンソールに表示された記事だけで、脳裏に顔が浮かぶ。勘が彼女だと言っている。 「情報が少ないから合っているか分からないけど、プライドの高い女の子はいたな。確か名前は――」 *     
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