#1 セッション

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 とはいえ、そろそろ加熱式タバコの導入も検討したほうがいいだろうか。などと考えながら見おろした隣家の縁側は猫だらけ。今いるだけでも、ざっと九匹。多頭飼いってやつだ。どの子もお世辞にも綺麗な毛並みじゃないけれど、あきらかに弱っていたり痩せこけていたりもなく、むしろ丸々としている。だったらまあ、べつにいっか。食うに困らなきゃひとまず安泰。私らだって似たようなものだ。それに、よそ様の猫事情より自分の抱えている問題のほうが重要だし。  のぱぁと息をはく。白い煙は空にのぼっても雲にはならず、あたりになじんで透けていく。  私を悩ませる案件は二つあった。うち一つは虫の害。ヤスデとムカデ。やつらは春から秋にかけて姿を現す。なんの因果か不思議なもので、その二種類が同じ年に出てくることはなかった。つまりヤスデが出た翌年はムカデ、その翌年はヤスデ、と交互に。  ともかくムカデはヤバイ。あの野郎はめちゃめちゃ好戦的だ。いかつい見かけに違わず、人間を見ても怯むことなく向かってくる。ゴキブリ用の殺虫剤も効かない。物理攻撃オンリー。ジャンプの角でしこたま殴ってどうにか勝ちをもぎとった。その点ヤスデはいい。やたら数が多くて生活に支障がでるので謹んで排除させていただくが、気色悪くても噛んでこないしシュッと殺虫剤で天に召されてくれる。ありがたい。     
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