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第2話
公園の片隅に置かれたベンチで、その人は背中を少し丸めて本を読んでいた。
木の葉の影がゆらめき、薄い紙の上にすべり落ちる。細い銀色のフレームの端で、ちらちらと日の光が反射していた。上からさらりと流れる髪を、時折控えめに押さえている。
足元には、大きな犬がゆったりと寝そべっていた。両足に顎を乗せ、飼い主の呼吸に合わせて静かにまどろんでいる。春の柔らかな風にひくひくと動く鼻が、近づいた浩之の気配をいち早く嗅ぎとったようだった。
「隣、いいですか」
浩之の声に顔をあげた男は、眼鏡の奥でまぶしげに目を細めた。「ああ、どうぞ」と小さく微笑み、少しだけ身体をずらす。犬は顔も上げずに視線だけをこちらに向けて(まぁ、いいだろうと鼻を鳴らしたようにも見えた)、再びまぶたを閉じた。
広々とした公園は、子どもたちがブランコを取り合ったり、滑り台から次々と飛び出してきたりと賑やかだ。だが、甥の葵は浩之の視線の先で、一人黙々と砂を掘っている。
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