第2話

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「いえ、タロウも遊び相手ができて嬉しいようです。普段は僕とこうして散歩するくらいで、きっと退屈していたと思いますから」  男は木ノ下と名乗り、この公園から歩いて二十分ほどのところに住んでいると言った。この町に越してきてから、それほど月日が経っていないらしい。一人暮らしなのだろうか。本の上に置かれた木ノ下の白い指を見る――指輪はない。だからと言って独身とも限らないだろう、と浩之はとりとめもなく考える。 「ここのベンチはちょうど木陰になるから、散歩中の休憩にはちょうど良いんです。でも、僕みたいな男が公園にいるというのは、どうも気まずくて」 「わかります。俺もあっちにはいけないですから」  視線で示した斜向かいのベンチでは、若い母親たちが話に花を咲かせている。そんな公園の片隅で、浩之と木ノ下はどこか浮いた存在だった。ちらちらと投げられる視線には、好奇心だけではなく警戒心も入り交じっているのがわかる。 「木ノ下さんがいてくれて良かったです。それに甥はこういうところであまり友だちを作ろうとしないのですが、タロウとはあんなに仲良くなって驚きました」 「甥?」  木ノ下が小さく首を傾げた。その仕草が最初の印象よりも幼く見えて、胸の奥がふわりとくすぐられる。 「……ああ、甥は――葵は、姉の子どもなんです」     
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