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彼氏彼女の憂鬱な日
オレの彼女は何とお月様が好きなのだ。彼女は夜空を見上げて、物思いに耽り、ため息を付く。そのため息は月が大きくなるにつれて大きくなる。最初は月が嫌いなのかと思っていたが、おそらくそうではない。嫌いなら、わざわざ見る必要がないじゃないか、ということに気づいたのだ。彼女の様子はまるで恋する乙女という感じで、魅力的でもあった。ただ、その姿が恐ろしく儚げで、その事実を確かめることで彼女が消えてしまいそうに思えるのも確かだ。だから、オレは彼女にそれを尋ねられていない。
しかし、狼男のオレにとって、彼女の月好きはかなりの致命傷だった。月が半分くらいになった頃から体はむずむずし始め、満月の日なんて、朝から調子がおかしい。テンションの空回りっていう奴だ。そんな時のオレは、とにかく空気の読めない一人道化のような状態になっている。だから、独り立ちをしてからは、オオカミに戻らないためにネットカフェに籠り、毛布を頭から被り、人工的な光りを浴びて、月明かりを感じないように過ごすことに決めていた。あそこは、余程のことがない限り一人空間だから都合がいい。
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