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それなのに、何故か今日に限って、十五夜の今日に限って彼女に呼び出されたのだ。オオカミになったオレの姿は恐ろしいに違いない。
多分…。
実際のところ分からないのだ。父親も狼男、母親も狼女。三人…いや、三匹が家の中で「うおぉー」と吠えていた時期もあったが、その姿を恐ろしいと言われたことはなかった。オレは父の姿を恐ろしいとも母の姿を恐ろしいとも思わなかったし、両親ともオレの姿を恐ろしいとは言わなかった。どちらかと言えば、大きくなっていくオレの姿を見て、嬉しそうに「大きくなったねぇ」とぺろぺろ顔を舐めるのだ。
実家では、とりあえず近所へのカモフラージュのためにハスキー犬を二匹飼っていたが、こいつらもオレ達のことを怖がったりしなかった。
だが、しかしだ。人間はどうだ?
世に出回っている狼男の登場シーンは叫ばれることが多い。そして、女性は逃げまどい、もしくは、気絶する。いやいや、あそこに出て来る狼男は、追いかけるからいけないのだ。人間世界に住むオレ達は、自分の体に起こっている変化を確かに感じている。だから、あんな間抜けな登場は絶対にしない。
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