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いやいや、しかし、元はと言えばだ。狼を追いやり、人間の姿でないと生きていけなくした人間の方がずっと恐ろしいのではないだろうか。そうだ。だから、万が一彼女の前で狼の姿になったとしても、何も恐れることはないはずだ。
そうだ、だって、以前彼女を連れて実家へ遊びに行った時、彼女はハスキー犬二匹に全く動じなかった。むしろ、愛情いっぱいにその背を、そのあごの下を、撫でていたではないか。
そこまで勢いよく考えたオレは、そこで大きなため息を付いた。
「無理だ…」
がっくりと膝を折ったオレは、スマホに手を遣り、「ごめん、今日熱が高くて行けなくなった」と文字を打っていた。
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