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「え?君は……」
「……由紀よ。」
私は、悲しい記憶を追い払うように、首を激しく横に振る。
「ふざけるな!何言ってるんだ、誰に頼まれた、由紀とは顔が違うじゃないか、いい加減にしろ!」
彼女が私をじっと見つめているのが分かる。
「本当は愛していたの。永遠に愛してる。」
私は恐る恐る彼女の顔を見た。顔は何も変わらない、ただ、目の前の彼女と、私の記憶の中の由紀との顔がぴたりと合わさり、そして由紀は私を見つめ、涙を流している。
「由紀?……じゃあ、どうしてあの時、あんなに軽々しく別れるって言ったんだ!」
由紀は顔を伏せて言う。
「その方が、貴方にとって良いかと思って……私、末期癌だったから……」
私は激しく動揺し、固く目を瞑って頭を抱えた。
「ああ……!」
その時、目蓋に閃光が走り、目を開けると視界は真っ白になり、私はゆっくりと車室に潰されていく。
「思い出した!俺は、事故で……じゃあ君は……」
由紀の方を向くと、私たちは草はらの中で星の光を浴びて向かい合っている。
「気づいたのね、貴方が亡くなった後、私はずっと泣いてた。嫌いだなんて言いたくなかった。言っちゃいけなかった。これほど愛していたんだから。」
「じゃあ、君も亡くなったのか?すまない、君を守ると言っておきながら、俺は何て役立たずな……」
「でも、こうして永遠に側に居られる。」
私と由紀は、星の海を仰ぎ、二人合わさると、一瞬で無数の粉になり、永遠に宇宙を広がり続けている。
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