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「戻ってきたの?」 「そりゃ戻るだろ。おまえが俺撮ってんの見たら」 ーーー ファインダーの端いっぱいまで広がるのは、田畑を覆った白雪。 ぼやけがちな雪景色を、真横にのびた線路が黒と直線のアクセントでひきしめる。 列車は山あいへと向かう。 省吾が離れていく。 走っても追いつけない。 でも望遠カメラなら一瞬で彼をつかまえる。 三津(みつ)はその一瞬の高鳴りを仕舞っておきたくて、シャッターを切った。 「目が合ったね」 「合ってねぇ」 省吾の息があがっている。 「俺に見えたのはそのごっついカメラ! っから戻ってきたんだ。あーくそ、横っ腹いてぇ」 「向こうに行ったらもっと死ぬほど走るんでしょうに」 三津がはぶいた距離を、省吾は馬鹿正直に自分の足でえんえん、えいこらと走ってきた。 時間をかけて、何も惜しまずに。 「バカ」 「好きって言えよ」 省吾の荒い息づかいと火照(ほて)りが三津にうつる。 「俺は好きだ」 「バカね」 俺も、って言わない省吾。 三津は笑った。 「荷物どうしたの?」
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