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夕焼け雲が、紅く染まる。まるで、あの日と同じように。
突き刺さるような痛みは、ほどけるように瞳の中で優しさへと変化していった。
追憶は、あまりに浸ると帰ってこられなくなる。そんな気がして、ふいに心のフタをしめた。
それでもなお、止まることなく、繰り広げられる昼と夜との境の美は、一見、残酷なようでありながら、変化しゆくことの慈悲をこちらに問いかけてくる。
夜が訪れても、日暮れに目に焼き付けた、紫と金色の景色は、精神の中で消えゆくことを許さない。
それがやがて、魂の上で刺青のように遺ることを、心は既に知っていた。
あの日の夕焼けの空も、そんなふうにして今なお鮮やかに残っているから。
克明に魂に刻まれたそれは、未だに、おれの胸を熱くする。
それでも、この空はいつまでも留まってくれやしなくて。
それをいやというほど、あなたに教えてもらったんだ。
夜になる。朝がくる。そして昼が幕を閉じ、また夜になる。
かつて、どれを取っても絶望だと名付けていたおれに、あまりにあっけなく、あなたはその全てに希望という名をつけた。
笑いながら。だって楽しいじゃないか、と。
今日という日は今日しかないのだからと。
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