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「・・・・・・・・・・・・・」
囁かれた言葉にバッと顔を上げた。
そこには余裕そうに微笑む男の顔。
聞き間違い?
いや、でも確かに・・・
「い、今のって・・・」
期待に声が上擦る。
だって・・・『それ』は
「言っておくが『仮』ではないからな。いらないなら忘れろ。」
意地悪く笑うその表情に、聞き間違いなんかじゃないと顔が一気に赤らんでいく。
「いる!いる!いる!」
そう何度も叫んで、抱き着く腕に力を込めた。
興奮でパタパタと尻尾が揺れる。
嬉しい、嬉しい、嬉しい・・・!!
「『・・・・・・・・』」
「・・・ん」
「『・・・・・・・・』」
「うん、そうだ・・・」
何度も繰り返す。
それにどこか嬉しそうに返ってくる声・・・その度に愛しさが増す。
抱き締め返してくれる手が優しく背中を撫で、男の吐く息が耳にかかる。
意地悪で、自由で、たまに優しくて・・・俺よりもずっと長く生きてきた吸血鬼。
愛しくてたまらないこの男の『名前』
小さくとも俺には十分聞き取れる声で囁かれたそれに、喜びで身体が震えた。
だって、欲しくて欲しくて堪らなかったんだ・・・
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