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「すっげぇ嬉しい・・・ありがとう。」
強く抱き付いたまま想いを込めて伝える。
背中に触れる手が暖かい。
その温もりに大きく息を吐き、興奮でドキドキと煩い心臓を落ち着かせていく。
伝えたい、自分の心を。
応えたい、この吸血鬼が向けてくれた想いに。
「俺は『・・・・・・・・』だ」
喜びと緊張で声が震えそうで・・・だけど丁寧に伝える。
ゆっくりと顔を上げ至近距離にある瞳を見つめれば、漆黒の瞳が優しく歪んだ。
口にしたのは仮ではなく、生まれ持った自分の本当の名前。
ただ一人・・・共に生きていくと決めた【パートナー】だけが呼ぶことを許される、特別な名前。
「『・・・・・・・・』か、君らしくて悪くない。」
「っ!」
初めて呼ばれる自分の名前。
ニッと笑いながら呼ばれるそれに、ドクンッ!と心臓が跳ねた。
「面白い顔になってるよ、『・・・・・・・・』」
「仕方ねぇだろ!見んな!!」
名前を呼ばれる気恥ずかしさから顔を隠した。
ギュウギュウと抱き着けばクスクスと笑う声が耳を擽った。
「ん・・・、・・・・・・・・」
やがてどちらからともなく重なった唇。
互いに確かめるように名前を呼びながら繰り返す口付けは、今までの中で一番気持ち良い。
一方通行なんかじゃない。
この男にとって自分はかけがえのない存在になれたのだ・・・それを実感していく。
クゥーン・・・
気づけば足元には夜と闇が座り、俺達を見上げていて。
「わ、悪い!夜、闇!」
慌てて身体を離し二匹を抱き締める。
甘えるように瞳を閉じる狼を撫でれば、頭上から穏やかな声が降ってきた。
「行こうか、・・・・・・・・」
「・・・うん!」
自然と呼ばれた名前に顔が綻ぶ。
見上げた男の後ろには大きな月。
その雲一つない夜空と同じように心は晴れ渡っている。
差し出された手を掴み立ち上がれば、隣に並ぶ吸血鬼。
これから共に時を重ねていく男の手に、グッと力を込めたー。
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