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夜の帳が広がる。
雲一つない晴れ渡った夜空
月が一番高い位置に昇ったとき...それが俺達の約束の時間。
別に決めた訳じゃない、けどいつしかそれが合図のようになっていた。
クゥーン...
岩の上に座って眼下に広がる森を見つめていれば、すり寄ってくる二匹の狼。
「どうした?夜、闇?」
フワフワの毛を揉み込むようにして撫でてやれば、更に甘えるように頭を擦り付けてくる。
素肌に触れる柔らかい毛と鼻先が擽ったい。
「よしよし...もう少し待って来なかったら帰ろうな。」
毎日会える訳じゃない。
だいたい、どこに棲み家があるのかも知らない。
会うのはいつもここで、ここにいる以外の時間何処で何をしているのかさえ知らない。
...だいたい、年齢もわかんねぇしな。
確実に俺よりは年上で、オッサン。
吸血鬼なのだから何百年も生きてきたのかもしれない。
それは自分も同じで...純血であるが故に長い時を生きてきたし、生きていかないといけない。
だからこそ、、、あの男との出会いは運命のように感じたんだ。
同じ時を生きていける、パートナーになれるんじゃないかと。
「って、向こうがその気にならないとなぁ...」
目の前の夜と闇が首を傾げる。
いつも側に居てくれる一番の理解者である狼。
コイツらのお陰でこうして待つ時間も寂しくはない。
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