見てはいけない電話口

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見てはいけない電話口

「あっくん! 私のスカートの公衆電話に無理矢理テレフォンカードを入れないで」  花和高(はなわこう)一年の秋。  美術部の帰り、あっくんは、お母さんに塾の話があるからと、ががんで、急に私のスカートのポケットについたテレフォンナンバーを押し始めた。  スカートの中から引き出した受話器を持ったまま茜の空を見上げる。  雲が流れて、私の頬を染めたり曇らせたりする。 「上に誰かいるの? じいーっと空の方を見ていて」 「んー」  わ、わわわ。  まるでセキセイインコのように甘いトーンで、電話口に何言ってもダメだからね。 「いるんだよ。春原美々(すのはら みみ)のドッペルゲンガーだ」  ドッペルゲンガーなんか、河原の道に見える訳ないじゃない。  あっくんは、きっとふざけている。 「美々のおさげがよく映っている。しかし、本来はうさぎだったらしい。雲の様子が変わるにつれ、うちにいるホーランドロップイヤーの(ひめ)ちゃんに似て来た」  そう言いながら、三井敦毅(みつい あつき)が、真顔になった。 「私、どう見ても一人だもん。あっくんは、変態なの」     
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