第2話 散りにし花か 儚い夢か

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第2話 散りにし花か 儚い夢か

「あ、そうだ 転移先は海だから」 「え」  無数にならんだ、楕円のカプセル。 そのうち、いくつかは蓋が閉ざされていた。 「……水深によりますね」 「海中じゃないぞ?」  よかった、と小さく呟く 隣の同期(ケルティ)。 「あはは、ごめんごめん! 海の近くって意味で言ったの」 「転移先は九州の隅、ある廃駅だ そこから橋を挟んだ先にある、古戦場跡が目的地だな」 「古戦場って……壇ノ浦ですかっ?」  歴史の授業で聞いたことがある。 「おぉ、さすがだねぇ! えらいぞー、うりうりうりぃ!」 「だきゃりゃ、ひょっぺたぁっ!」  ひっぱられながら ふと横を見ると 深刻な顔で首を傾げてる奴がいた。 「そこに別行動している3人が……大丈夫か?」 「なんですか、壇ノ浦って」 「ん、大昔の日本で起きた戦いのこと! そこの跡地が山口にあってねー?」 「ひぇも、ひゃんで━━」 「フルラ!」 「あ、ごめん なんか触り心地よくって、つい……へへっ」 「……次やったらほんとに怒りますからね」 「イエッサー、もうしない!」 「……口調がすでに嘘くせぇん━━ じゃなくてっ! どうして わざわざ壇ノ浦へ? あそこって指定採掘場とかじゃないですよねっ?」 「鋭い!」 「ひっひゃしゃききゃりゃあ!」 「え、と…… 指定採掘場って、顕現鉱石の採れる場所でしたよね?」 「そ!そこで安全なアクセスポイントを確保して 非戦闘班の大量転移を可能にするのも偵察班の仕事だからねー」  非戦闘員という言葉を聞いて ケルティがあたしの方を見てきた。 「……未練とかないんですけど?」 「なにも言ってないよ」  うわ、ムカつく。 「だけどね?」  ずいっと顔寄せ、囁く小隊長。 「おかしいと思わない? 指定採掘場の多くは、特に価値のなさそうな場所ばっかり」  ……言われてみれば。 教育機関の体育館、公民館や、公園ばかり。 「ま、採掘そのもののは採掘班(非戦闘班)しか知らないことだから どういう理屈で体育館とかに顕現鉱石が生じるのかはわからないけどねー」 「……じゃあ、壇ノ浦に行く理由って?」 「んー わからないって気持ちわるいじゃん?」  ……なにか、考えがあるだろう。 そこに行けばきっと、彼女の推論に答えがでる。 「……わかったら、教えてくださいねっ」  ふと、微笑みが消えた。 「……もちろん!」  瞬間、口元に戻る微笑。 だけど、その目は笑ってなかった。
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