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 この世界には伝説がある。  数多くの物語に使われるが故に誰もが知り、 生きた自然災害と呼ばれるドラゴン族の一つ〝豪放の魔蛟竜(フューリーエンドドラゴン)〟の話や、 現存する地図の大半を占めるトルティーニ大陸を拳一つで割り、 ヘルズネクトという巨大な谷をつくったとされる名も無い巨人の話。  あるいは。  世界に数個しかないとされ、 その力は日光により己の分身を数百人単位で作り出せると言われる天然プリズム鉱石〝魔連隊の召喚石(サメントプリズムレジメント)〟の話や、 永久の生命を齎すと囁かれ、 しかしそれが元で禁忌とされる魔具〝尾を飲み込む円環の大蛇(リング・オブ・ウロボロス)〟という指輪の話。  それはどれも眉唾物の話であり、 唯一その存在が実しやかに人々の口に上がる〝豪放の魔蛟竜〟でさえ、 物語のラストを飾る為に劇作家が作り上げたものだと言われている。 だが。  話が伝説と成るには、 どこかに信憑性のある史実が絡んでいる場合が殆どだ。  それは、 信じられない程に強大な竜を、 記憶に残そうとした話が元かもしれない。  それは、 坑道に充満するガスによって、 目を回した鉱山夫の幻覚が元かもしれない。  それは、
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