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屋敷での惨事があってから、彼らは街中の宿にて寝起きをしていました。『青い鳥』を捕らえるまで帰らないと誓って――。
夕食をとり、人心地つくと四人はテーブルを囲みます。チルチルと猫の獣人アビゲイルはワインを、ミチルと犬の獣人エドワードはロシアンティーを、それぞれ落ち着く飲み物を手に協議を始めることにしました。
その前に、ワインの香りを楽しむチルチルに、ミチルが問いかけました。
「チルチル、君、お酒なんて飲めたの?」
「お酒くらい飲めるんだから!」
チルチルとミチルはまだ16歳。これまで両親の目を盗んでお酒を手にしたこともありません。困惑するミチルを横目に、チルチルがぺろりと舌先を付けたところで、アビゲイルがグラスをさらっていきました。
「はーい。お嬢様はこちらですよ。甘くておいしい葡萄ジュース。ワインは大人になってからですよ」
正直なところ、口に合わなかったのでしょう。チルチルはすぐさまアビゲイルの差し出した葡萄ジュースを口に含み、飲み込んだ後に咳ばらいをしました。
「じゃ、まず、魔法使いについて話すわ」
何事もなかったように、すましてチルチルが口火を切りました。
「魔法使いに会ったわ。彼も『青い鳥』を探してる。今の『青い鳥』には強力な魔力が宿っていて、それを影で押さえているのが魔法使いなの。けど、魔法使い自身が『青い鳥』に見ってしまうとその封印を破られてしまう可能性があるんですって。だから魔法使いは『青い鳥』に存在を知られるわけにいかないらしいの」
「それって、鳥よりも魔法使いの方が弱いってことですよね?」
「ふふん」と、アビゲイルが鼻で笑いました。「さあ?」と、チルチルも同じように笑いながら、両手を肩の位置で広げる仕草をして見せました。
「魔法使いは『青い鳥』にあまり近づけないけど、私たちが『青い鳥』を捕まえさえすれば、これまでのように鳥籠に入れられるサイズにしてくれるんですって。鳥の姿に戻せるそうよ」
「確かにあの大きな体はとても籠に詰め込めません。飛べなくなったのはいいけど、まさか人型になるとは思いもよりませんでしたね。だけど、この際、しょうもない魔法使いなどあてにせず、大きな籠を新調すればよいのでは?」
ふたたび鼻先に笑いを乗せながらアビゲイルが提案します。すると、
「しょうもないとは、聞き捨てならないなぁ」
知らぬ間に、アビゲイルの隣に着座していた人物が頬杖をつきながら異を唱えました。
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