緑の魔法使い

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 その話がブランシュ中を騒がせているという。 「厳密に言うと、死者が生き返ったわけじゃない。それなのに何故だろう? 母親のペリリュンヌは“生き返った”と触れ回っているようだよ。まるで誰かが『青い鳥』を神格化させようとしているようだね」  話し終わると魔法使いは席を立ち、「今日は僕もここで休ませてもらうね。明日からは一緒に探すよ」と、どこから出てきたのだろう、部屋の隅の、先ほどまでは無かったはずのベッドに潜り込んだ。  「チルチル様、今日は私、一人で行動させてもらいますわ。思うところがありますの。お付きはこの魔法使いに申し付け下さい」  翌朝、捜索の前にアビゲイルが申し出た。“今日は”といいつつ、彼女は大抵単独行動だ。猫の性というやつだろう。そして、なにものにも媚びない自由な発言もまた、猫の性だ。 「そんな! 駄目だよ。彼に失礼だろう」 「いいよ。ミチル。どうせ僕は隠れてなきゃいけないんだ。今日は彼女の代わりでチルチル様の従者になるよ」 「私の後ろに隠れられるわけないじゃない。体の大きなエドワードと一緒に行ったら?」 「僕はチルチルと一緒に行くよ」  魔法使いが断りを入れたのが救いだ。昨夜の一件以来、エドワードは魔法使いを警戒している。 「体の大きさを変えることはできないけど、気配を隠すことが出来る。一歩後ろに控えれば誰も僕を気にしなくなるから大丈夫だよ」 「ね? いいでしょ? ミチル様。頼もしい魔法使いが付いていればチルチル様も安全ですよ。じゃ、行ってまいります!」 「これだから、勝手気ままな猫風情には困りますね。私も、ミュウ様が付いて下さるなら安心だと思いますよ、ご主人様」  言葉尻も終わらないうちに、ひらりと街に溶け込むアビゲイルの背にエドワードが毒を吐く。魔法使いと同行するのも真っ平だ。彼がチルチルと行くことを勧めるのも忘れない。いつもの光景のようだが、少しだけ緊張感が混じっているのに双子は気づかなかった。  そして、今日も彼らは『青い鳥』を探しに街を漂うのだった。
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