1.夜明けに出会う

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1.夜明けに出会う

「そんな所で寝てたら風邪を引いちゃうよ?」  真っ暗な夜の森の中。1人で蹲っているとそう声を掛けられた。最初はこの声を気のせいだと思った。何しろ俺が蹲って座っている場所は道から外れた場所で、しかも星灯りさえも遮ってしまう木の下だったのだ。そうそう人が見つけられるはずがない。  だから、気のせいだと思ったのだ。こんな自分を見つける人なんて、この世界には誰1人としていない。俺は1人だ。このまま誰にも見つからず、死んでいくのだろうと思っていた。  けれど。 「ねぇ、大丈夫?」  また、声が聞こえた。 「放っておいてくれよ」  空耳だと思いつつも、俺は咄嗟にそう答えていた。 「放っておかないよ。だって、僕は君を見つけたんだもの」  その声に、ようやく俺は顔をあげて目の前にいる影を見た。影は俺が顔をあげたことに目を細めて微笑み、その後ろでは星がきらきらと輝いていた。彼は蹲っている俺に手を差し伸べると、頭を少し傾けて訊ねてくる。 「大丈夫?立てる?」 「…立てる」  俺は少年の手を取って立ち上がった。世界が、空がぐんと近くなったような気がして、それから改めて俺の手を握っている少年を見た。     
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