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仲間はやはり他の人よりもどこか親近感というかそういうのがあって、それはそれで特別という感じがするのだけれど、ノエに最初に感じた『特別』とはやはり違うものなのだ。今だってそうだ。
ノエが気になる。気になって、目で追って、追いかけて、会いたくて、話したくて。一緒にいたいと思うのは仲間ではなくノエなのだ。
だから、トガセがノエの隣に平然と立っていることに腹を立てている自分がいる。隣は俺の居場所なのに、と思う。
そう思うのに、そこで一歩前へ踏み出せない俺がいるのまた事実なのだ。だって、ノエは俺にとって特別だけど、ノエにとっての特別は俺じゃないかもしれない。俺はノエに『君がいなくても大丈夫だよ』と言われるのが怖いのだ。だからそこそこの位置に立って、ノエが断らないと知っていて一緒に旅について来ているだけなのだ。
不毛な自分の考えにはぁっと息をはいた。だいぶ人通りが少ない場所にまでやってくると近くに川があるのを見つける。ただ何となくその川に沿って緩やかな坂を上がっていく。坂を上がりきると広場みたいな場所に出て、その川の近くにある木の幹にもたれかかっている彼を見つけた。
ぼーっと坂から見える町の風景を眺めていたノエだが、ふと俺の方を見ると「あれ?」と首をかしげた。
「どうしたのキサ?」
「いや…あんまり食べてないようだったから、その」
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