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背は自分よりも低めで子供っぽい顔立ちだが、どこか大人びた雰囲気があるような少年。彼は夜空のような髪をふわふわと風になびかせながら俺を安心させるかのように笑った。
「良かった。具合が悪いっていうわけでもなさそうだね。
でもここは森の中だし、いつ魔物が襲ってくるかわからないから僕と一緒に町まで行こう?」
少年は俺の手を握ったまま、そう言う。こんな夜に少年が1人いるのもおかしい話だが、こうして自分も1人で森の中に蹲っていたのだ。世界に自分のような者は1人だけかと思っていたが、実はそうではないのかもしれない。
「ああ、わかった」
俺がそう答えると彼は俺の手を引いて真っ暗な森の中を歩き出した。それを空の星だけがただ照らしていた。暗いはずなのにはっきりと見える彼の背。こんなにもはっきりと見えるなら、彼にとっても俺の姿がよく見えたに違いない。でも彼以外のまわりの景色は真っ暗で、それこそ時々躓きそうになる。そのたびに彼が俺の手をしっかりと握り直してくれた。まわりが暗いのに彼だけがはっきりと見えるなんて、普通ありえない。
だから、彼はきっと特別な人なのだ。こんな暗い世界でも、俺を見つけることができた君。
「なぁ、お前。
名前は?どうして森を歩いてたんだ?」
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