2.彼と仲間と俺

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 目の前に本人がいると言うのにまるで勝手に人の心を決め付けたかのような会話に心でツッコミを入れる。言葉に出して言わないのは若干トガセが言う事には一理あるというか思うところがあるので言わないだけで、本当なら先ほど言いかけた「別に俺はノエを今でも頼ってるし、これからも頼りたい」という言葉をノエに伝えたかった。トガセに丸め込まれて若干気落ちしているノエに、なんと声をかけようか迷っていると。 「これからは僕もなるべくキサが早く一人前になれるようにがんばるからね」  と、眉を少し下げながら笑うノエ。  それに(違うんだ!別にノエと離れたくて一人前になりたいとか考えてない!)と言いたいのに。結局出てきた言葉は「おう」の一言。  トガセは俺の言葉にうんうんと頷いて(元はと言えばこいつのせいなのに)、「がんばれよ」とまるで他人事かのように言う。実際に他人事であることには違いないだろうが。 「みなさーん、朝食の準備ができたそうですよー」  そこへ今度はメイド服に身を包んだ旅の仲間であるシオリがうきうきした表情でやってくる。「今日はどんな朝ごはんだろうなー♪目玉焼き、スクランブルエッグ、パンにジャムにはちみつに紅茶もあったら幸せだなー♪」即席の歌を口ずさむシオリに、俺達は笑った。おっちょこちょいだが、一生懸命でムードメーカーなシオリは少し空気を読めていないところがあるが、逆にそれがみんなにとってはちょうど良いのだ。 「ご飯、食べよっか」 「そやな」 「おう」  とりあえず先ほどまでの話はおいといて、シオリが早く早くと手を振っているので俺達は宿屋の片隅にある食堂へと歩いて行った。 「おっそ~い」     
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