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俺達が向かった食堂にはすでに残る旅の仲間であるノナがテーブルで頬杖をついて待っていた。俺達の姿が見えると開口一番悪態をつきながら、それでも次にはニコニコと笑って「さぁさぁ早く座って!」と席に促した。腕を引っ張られノナの隣に半強制的に座らされ、俺のその横にシオリ、シオリの真向かいにノエ、そのノエの隣にトガセが座る。テーブルには人数分のコップとパンとスープが用意されている。シオリの即席の歌にあったスクランブルエッグもテーブルの真ん中に置いてある。
「わぁ…!美味しそうですね!!」
「みんな来るのが遅いから適当に頼んじゃったけど、いいわよね?」
「うん、助かったよ、ノナ。ありがとう」
少しだけ不安そうに言うノナにノエが感謝の言葉を言うと「良かった」とノナは頷いて姿勢を正す。トガセは席に着くなりもうすでにパンを手に取り食べている。シオリは「今日も大地の恵みに感謝します!」と簡単にお祈りを済ませて早速スクランブルエッグを取ろうと身を乗り出している。
「キサは?何食べる?スクランブルエッグ取ってあげようか?」
「いや、大丈夫」
まだ何も手をつけてない俺にノナが可愛く小首を傾けて聞いてくるのを断りながら、近くにあるパンのかごからくるみパンを取って一口食べる。最近は野宿が続いていたから、久々にまともな食事だ。シオリが嬉しそうにしているのも頷けるし、俺ももちろん嬉しい。
だが、それよりも気になる事が目の前で起きているのも、また事実なのだ。
トガセがパンを食べながら食堂に来る途中で置いてあった雑誌を借りて片手間に見ているのだが、そのせいか手元の食事が疎かになっている。それを何かと隣に座るノエが仕方がないなぁという顔で面倒をみているのだ。
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