SPACE STEPS

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SPACE STEPS

僕の試合はいつも空を見上げる場所から始まった。 そして、今回見上げた空には永遠に続く高い塔が聳え立っていた。 僕の名前は小山内和也。大学四年生だ。 幼くして両親を事故で亡くし天涯孤独の身となったが、僕には長距離ランナーとしての素晴らしい能力が与えられていた。 この能力のお陰で高校の時代から長距離レースで頭角を表し、大学も箱根駅伝の常連大学に推薦で合格した。 そして、大学一年生から箱根駅伝のレギュラーとして5区の山上りを3年連続で担当し、毎年区間新記録を塗り替えた。 今年2040年の大会では、初めてこの区間を1時間を切って走り、この区間だけで10分以上のアドバンテージをチームに与える事が出来た。 とにかく、登りの競争だけは誰にも負けなかった。 小田原の中継所で、空の向こうの箱根の山を見上げると、空の青と山の緑が僕の精神を落ち着かせ、今から始まる厳しい山上りさえワクワクしていた。 こんな僕だから女の子には随分モテたけど、なかなか彼女と呼べる女性に巡り会う事は出来なかった。でも大学3年生の夏、僕は前橋 綾と出会った。 同じ大学に通う同級生で、気の利く、とても優しい娘だった。
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