0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
1、落ちた強豪と八人のクズ
オルゴール調の着信音が静かな部屋の中で響く。彼方は急いで電話に出た。
「はい、浜中彼方です。はい、はい…そうですか。分かりました…。いえ、ありがとうございます」
(……またダメだった)
オーディション不合格の通知を貰ったのは、人生で何回目だろうか。
少なくとも片手では足りないくらいには落ちている。
自分に才能がないのか。それとも努力が足りないのか。まだ、見出だせないままである。
「かなちゃん、大丈夫よ。あなたはまだ学生なんだから。まだまだ先があるから」
母、愛理の優しい声にポロポロと涙が溢れる。
(お母さん…私、お母さんみたいになれないよ…)
声も出さずに涙を溢す彼方の背中を擦りながら愛理は
「明日は高校の入学式なんだから。早く寝なさい」
と言った。
最初のコメントを投稿しよう!