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「危ない!」
咄嗟に手を伸ばしてソウタを抱きしめた。どこもぶつけなかったソウタの代わりに、俺が床に身体を打ち付けてしまった。地味に痛い。というか、この状況はまずい。
俺はソウタに押し倒されている状態だ。ソウタはというと、俺の胸の上で気持ち良さそうにすやすやと眠っている。ああ、もう!
「俺の馬鹿って、どんな夢見てたんだよ……」
けど、寝言を言ってくれて良かった。そうじゃなかったら俺、ソウタに――。
「いかんいかん!」
俺は出せる力を振り絞って、起き上がった。そして、ソファーにソウタを凭れさせる。起きる様子も無く、ソウタは夢の中だ。
「……馬鹿ソウタ」
俺は呟いてノートに向き直った。内容は全然頭に入って来ない。
呑もうなんて誘わなければ良かったな……けど。
きっと、今の俺の顔は赤いんだろう。こんな気持ち、初めてだ。ただの友達だと思ってたけど……俺、ソウタのこと恋愛対象として……。
「まずいよな……」
ソウタが起きたら、どんな顔して話せばいいのか分からない。心が中学生くらいに戻ってしまった気分だ。ソウタ。綺麗で優しくてちょっとふわふわしてて危なっかしくってほっとけなくって……。好きな所しか挙がって来ない。ああ、これは重症だ。
「好き……」
深い眠りの中のソウタに呟く。今はまだ友達で良い。けど、いつか俺が心を打ち明けたら……ソウタはどうするだろう。フラれるなら傷が浅い方が良い。なんて告る前から考えてしまう。
ソウタ、好きだ。気付いてしまった自分の恋心を誤魔化すように、ソウタの飲みさしのビールを飲み干した。儚い恋の味は、思った以上に、苦かった。
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