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機嫌を損ねた俺の大切な恋人の機嫌を取るべく、俺はカチューシャを頭から奪ってそこにくちづけた。
「……悪戯、貰おうかな」
「っ……」
顔を赤くするソウタに、俺も首を傾げて言う。
「俺からも、トリック、オア、トリート?」
「もう……分かってるくせに」
ソウタの横に移動して、ずるい、と口を尖らせるソウタのくちびるを奪った。
角度を変えて、何度もキスをする。
深いキスは、かぼちゃの味がした。
「僕も、悪戯欲しい……」
「じゃあ、二人で悪戯し合おう」
ゆっくりと離れて、ソウタを見つめた。真っ赤だ。可愛い。
「先にお風呂どうぞ」
「……うん」
食器を片づけるべく、俺は腕まくりをした。
ソウタは俺をちらり、と見てから浴室に消える。
「悪戯か」
俺はソウタから奪ったカチューシャを自分に乗せて鏡を見てみた。恐ろしい程似合わない。俺は苦笑するが、カチューシャをそのままに洗い物に集中した。ソウタ、何て言うかな。
カチューシャからソウタの髪のにおいがほんのりした。
さて、今夜はどんな悪戯をしようかな。
ソウタからの悪戯も楽しみに思いながら、皿の泡を落とす。
どこかの喧騒を想像しながら、俺は恋人が居る幸せを噛みしめた。
ハロウィンの夜は、まだ始まったばかりだ。
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