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「さっきの話だけど」
後始末を終えたケイと手を繋ぐ。終わった後の疲労感で、僕の瞼は半分下がっていた。
「いい夫婦の話?」
「そう。夫ふたりだから、いい夫夫の日になるよな……」
「ふふっ。何それ……」
「こういう名称さ、ちゃんと考えて欲しいよな」
「誰が考えるの?」
「そりゃ……偉い人とか」
「そうだね、いつかそういう日が出来るかもだね」
「ソウタ、真面目に聞いてる?」
「聞いてるよ」
眠たくって、ケイの胸に顔を押し付けた。
「疲れちゃった」
「ああ……悪い」
「悪くないよ……気持ち良かった」
ケイが僕を抱き寄せる。その腕の中で、僕は目を閉じた。
いい夫婦か……。
どんなかたちであれ、ケイとこうやって一緒に居れるのは幸せなことだ。
僕はうなじを撫でた。ケイからの愛のあかしがそこにはある。
「……いいつがいの日ってどう?」
「おっ。良いかも! さすがソウタ」
「でも、つがいって語呂無いね」
「じゃあ、今日をその日にしよう」
僕は目を開ける。きらきらした顔のケイが僕を見ていた。
「……そうだね……来年もよろしくね」
「ああ、よろしく」
ふふ、と笑い合った。そうしてもう一度目を瞑る。優しいキスが瞼に落とされた。
これからも、いいつがいで居ようね、ケイ。
遠ざかる意識の中、僕は心の中でそう唱えた。
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