二、

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二、

「どう? 卒論は終わった?」 「いや、まだなんだ。実は悩んでるんだ」 「いつまで悩んでいるのよ。今度は何を悩んでいるの?」 「うん、このままだと日本陸軍の悪口だけを書いてしまうことになるんだ」 「でもそれが事実なんだったら、それでいいんじゃない?」 「そうはいかないよ。マッカーサーだってフィリピンを奪還したあと、戦争を終わらせることが出来たと言っているし。それに、知っているだろう? 俺の祖父は陸軍の将官だった。あの優しかった祖父がそんなはずはないと思うんだ。祖父の名誉も守りたい。だから、何かあるんじゃないかと思って、それを見つけ出したいんだ。きっと何かあるはずなんだ」 「でも、もう卒論の締め切りは過ぎているんでしょう? そんなこと言っていると卒業できなくなるんじゃなくて? それは困るわ。ちゃんと私のことも考えてくれてる?」 「分かってる。もちろん、分かってるよ」
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