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「君が思うほど…白魔導士って仕事は地味でもなければ簡単でもない。そもそもどうしてお母さんやお父さんが、君が白魔導士の才能を持つと知って喜んだんだと思う?それは君が安全だからっていうわけじゃないぞ。白魔導士ってのは需要が高いからだ。つまり非常に就職率が高い。剣士がいないパーティはあっても、白魔導士…回復役がいないパーティなんてまずいない。そうは思わないか」
それは――なんとなく、わかる。僕が一番好きなパーティはカタストロフィだが、他の冒険者チームだってたくさん特集やニュースで見ているのだ。筋骨粒々な男達で固めた“ザイロ”。逆に素早さをいかし、シーフ中心でパーティを組んでいる女性だけのチーム“ラミア”。魔法攻撃を得意とするチームや、回復と防御力で持久戦を狙うチームなど様々に存在しているのは間違いない。どのチームにも良さがあり、それぞれ得手不得手がある。バランス良くチームを組めばそれでいい、というわけでないのが冒険の醍醐味なのだ。
そして、どのチームにも共通している唯一と言っていい点は。どのチームにも必ず白魔導士が一人、パーティに組み込まれているということだろう。回復役を組み込まないパーティは極めて希だ。何故ならば冒険は多くの場合が長丁場になるからである。一度も回復せず、薬草だけでゴールまで乗りきるのはかなり厳しいと言わざるをえない。
確かにそう考えれば、白魔導士という職は他の職よりも有用であるのかもしれないが――。
「それでも…僕じゃなくたっていいじゃないですか」
だから納得しろ、と言われたらそれはまた話が別だ。
「地味でもなければ簡単でもないって、ナニソレ。地味で簡単じゃん。パーティの最後尾で、味方がやられるたびに回復魔法連呼すればそれでいいだけなんだからさぁ…」
「本当にそうかねぇ」
何が言いたいのだろう。お師匠サマはにんまり笑って僕の手を引っ張った。
「どうして俺が此処にお前を連れてきたと思う?…この道はな。俺が一番かっけーと思ってるチームがよく通る場所なんだ。この荒野には砂蜥蜴がよく出没するだろ?砂蜥蜴の尾はいい薬になるし…それ以外にも結構いい素材を持つモンスターが出没するからなぁ」
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