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パーティは見事な連携で砂蜥蜴三匹をあっという間に討伐してしまった。なんて鮮やかさだろう。同時に――驚かされた。白魔導士なんて、後ろから適当に補助だの回復だのを呟いていればなんとかなる仕事だとばかり思っていたのに。
違ったのか。彼のように――情報を分析しながら最良の魔法を味方にかける、そんな白魔導士がいたなんて。
「白魔導士は、確かに一番最後尾に立っていなくちゃならないジョブだ。何故なら白魔導士は装甲が脆く、少し強い物理攻撃でさえ致命傷になりかねないから。…復活呪文や回復魔法を使える白魔導士が無事なら、パーティは何度でも甦るだろう。だから、一番安全な場所にいなければならない。白魔導士が前に出るのは自殺行為で、そしてパーティの仲間達の身さえ危険に晒す…足を引っ張りかねない絶対の禁忌なんだ」
見ている間にも、また彼らは新しいモンスターに遭遇していた。巨大な芋虫のような怪物――ワーム・グールだ。一見するとなんの武器も持たない大きいだけの芋虫に見えるこのモンスターが、存外厄介らしいと話だけなら聞いたことがある。
「そして、最後尾でみんなの背中を見つめている白魔導士だからこそ、冷静に状況を判断して指示を出すことに長けてるんだ。見ろ」
ワームが全身をぶるりと震わせる。瞬間、白魔導士の彼は叫んでいた。
「“Anti-Water-All”!」
水魔法や水攻撃を弾くバリアを全体に張ったのだ。次の瞬間、ワームががばりと頭の部分に牙だらけの口を開き――毒液を噴き上げた。彼らはもろにそれを被る。幸い、水を弾く魔法のおかげで無傷ですんだらしいが。
「皆さん、頭と首の錬結部分を狙ってください!そこが弱点です!!」
クオースは的確に指示を出していく。たった一度の攻撃で弱点を見抜いて見せたのも凄いが――今のバリア。ワームは物理攻撃も魔法攻撃も行ってくるモンスターだったはず。それなのに、瞬時に魔法攻撃やそれに準ずる攻撃後が来ると予測して防いで見せたのか。ワームの震えを見逃さなかったのだとすれば――なんて観察眼か。そして。
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