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どれだけ血の気が多いんだ、こいつは。
恥じ入っている身体に流れる濃くて甘い体液を想像すると、急にのどの渇きを催した。それを相手に悟られないようにそっと唾を飲む。
「帰り道、俺のところで献血しにこいよ」
口を開いて手首に吸い付き、犬歯を薄い皮膚に押し当ててやると牧田の喉が上下した。
傷つける気はない。そのまま舌先で舐り上げると「くぅん」と鼻から抜ける様な情けない声がした。
「お前は犬か?」
いつも温厚な牧田を怒らせる唯一の言葉はこれだ。聞いた途端鼻の穴膨らませて真剣な顔で睨みつけてくる。
「犬言うな!あんな、誰にでも尻尾振るような動物と俺を一緒にするな!」
こんな言葉を何度も真っ向から否定するあたりが律儀な犬っぽい。
牧田は声を上げ興奮して立ち上がりかけたが、幸い授業時間のせいか客も少なく、大して注目も集まらなかった。
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