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テラス席には大学構内にある動物病院に行った帰りらしき女性がそのまま会話を続けている。しかし椅子の横で大人しく伏せをしていたミニチュアシュナウザーとフレンチブルドッグが何かを察知したように身体を起こした。
グルルルルルルル……という声こそ聞こえないものの、歯を剥いて唸っているのが分かる。
飼い主は会話に夢中で気が付いていない。
犬を見た牧田のつぶらな瞳が一瞬金色に光ったように見えた。睨まれた子犬は固まり、すぐに尻尾を股の間に挟んで耳を下げて椅子の下に潜り込んで震えている。
キュウ~ン、と言う哀れな声が聞こえてきそうだ。
「お前さ、人当たりいいくせに犬にだけはきついな。そんなに嫌いなのか?」
別に怒ったわけでもないのに、その言葉に牧田はしゅんと肩を落とした。
本当に犬みたいだな。耳と尻尾があれば絶対に垂れててかわいいはずだ。
頭の中でこっそりとしょげる大型犬を想像した譲は、手を伸ばして筋肉質な腕を引き、図体の大きな友人を席に座らせた。
基本誰にでも親切な牧田が犬と仲良くしている所を見たことが無い。そもそも、犬猫含め哺乳類にはあまり好かれていない。
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