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そう言った場面を見るにつけ、五大会連続出場、しかも三回メダルを獲得した柊の偉大さを実感する。五輪は、柊のライダーとしての歴史でもあるんだと思う。
今大会も柊は決勝の最終滑走を目指して飛ぶ。どこにも隙のない最強ルーティーンを繰り出すんだろう。
俺は……その隙のない柊の更に上を行くエアーを飛ぶほかない訳だけど、具体的にはノープランである。だってW杯で100点満点出す人の上ってどうすりゃいいんだまったくって話だし。
「あんなぁ……おまえも99点叩き出すバケモンやぞ。ほかのライダーが聞いたら石投げられんぞ」
そんな行儀の悪い人は居ませんと反論したら『ものの例えや』と鼻をグイグイ摘ままれた。
「とにかく怪我だけはすんな。テレビカメラの向こうで、さつきちゃんが尿カテキット構えとるぞ」
「ホントに勘弁してください……」
怪我なく安全に、且つ柊の背後を狙う高等技術が今の自分にあるとは思えない。が、やるしかない。
イヤホンをつけ、自分の世界を作って行く。
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