ONE DAY from snowy snowy snow

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  雄大からも電話が掛かってきた。外国なのに時差がないって妙に戸惑う。 『曽我がぁ~~……』 「おまえが泣くな」 前季はスランプに陥っていたと言うけれど、今季は誰が見ても好調だった曽我くん。最初雄大とは犬猿の仲なのかと思ったけど、ギャーギャー言いながらも仲良くやっていた。今日、テレビ中継されている中での曽我くんのクラッシュはかなりショックだったらしい。 『録画とかニュースとか絶対見んなよ』 「もともと見んし大丈夫」 それでも俺が二位通過だった事は喜んでくれた。日本では今、明日の決勝での俺と柊の師弟対決の実現に湧いているそうだ。この平昌のどこかで取材中だと言うアベさんも大興奮らしい。ぜんぶ他人事みたいに感じるのは自分でも不思議ではある。 『二人が同時に出場したらそうなるのはもう定番になりつつあるからなー』 「カールさんが張りついとる」 『二位と三位の得点差を冷静に見ろ。ノイマンは完全に銅狙いで来る。太一と柊にーちゃんの間に割り込もうなんて今は誰も考えんわ』 この一年半、柊と一緒に目指したこの平昌。明日の決勝。 それは夢の実現であるはずなのに現実味がほとんど無い。 そこに関してだけは、心が酷くフラットとでも言うのか…………雪が静かに降り積もる時のようにしんしんとした、冷たく冴えた感覚を湛えている。
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