出会い

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 その様子は人に裏切られたことも裏切ったこともないようなほどに純粋な感じで、大佐のことを完全に信じきってしまっているようでした。  面白い。大佐は後に起こる、少女が再び地獄に落ちて泣き叫ぶ様子を想像しては、ぞくぞくしていました。自分に騙されたと知った時のこいつの顔はどんなだろうか。澄んだ瞳が捉えた黒服姿の男が悪魔に変わるその瞬間は、いかほどなのだろうか。興味が尽きません。そしておそらくこの殺し方が一番美しく、一番芸術的で、一番残酷であるだろうと大佐は確信しました。何故ならこの少女そのものが花のように美しく、虐殺という名の芸術の舞台に最も相応しい演者だと思ったからです。  すすり泣く少女の背中を撫でながら自らに言い聞かせます。これから俺は『世界で一番優しい親衛隊員』なのだ、と。
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