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こういう時、一体どうすればいいのだろうか。優しく声をかける?そっぽを向かれたらどうしよう。 いやいや、そんなはずはない。僕と白河さんは、昨年度同じクラスで──だから、堅い絆で結ばれている、のかな? 正直なところ、はっきりと、そうだ、とは言えない。けれど、このような気まずい空気をずっと感じているよりは、話しかけた方が断然ましなような気がする。よし。 僕は喉仏を大きく動かし、固まった唾を飲み込んだ。 「白河さん。久しぶりだね」 できる限り、自然な感じで。 「久し、ぶり」 まずい。一層、変な空気になってしまいそうだ。何か、話題はないか?あ、そうだ。 「ここ、よく来るの?」 絶対聞いてはいけない事だっただろうな。だって、相手も制服だし。これは──こういう場面ってどうすればいいのだろうか。 「何か、些細なことでも、困ったり、嫌なことがあったりしたときはここへ来るの。知らなかったでしょ」 北極星って、こぐま座にあるんだ。でも、北極星でしょ。それを「くま」って── そのくらい驚いた。あの場違いな質問に難なく答えられるなんて。「人は見た目で判断してはいけない」いつの日か母は言った。それはこのことか。 あれ?いや、ちょっと待って。「困った時」……やっぱりあの質問はしなかった方が良かったんじゃないかな? 今更遅いか。あとの祭りだ。
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