鬼になるのは

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 奈津の家では、鬼女供養にまつわるさまざまな話を聞くことができて参考になった。奈津の父は、奈津がやっと家のことに興味を持ってくれた、これも私のおかげだと喜んでくれていた。  そして、夜の村祭りでは、鬼女供養を間近で見学することができた。村の鬼女伝説と鬼女供養の概要はこんな感じだ。  昔、都から美しい姫がこの地に流れてきた。姫はやんごとなき貴人の子を身ごもっており、この地で可愛らしい赤子を産んだ。しかし、その赤子は貴人の手の者によって攫われてしまう。女は鬼になった。この洞穴に住みつき、毎晩一人ずつ村の子供をさらって喰らったという。あるとき、旅の修験者が法力により洞穴を岩で塞ぎ呪文を七日七晩唱え続けた。修験者が精魂尽き果て倒れた時、岩が割れ、村人が中を覗くと鬼女は木乃伊になっていた。  それから鬼女を鎮めるための鬼女供養が行われるようになった。鬼女を慰めるために、子供に見たてた肉を洞穴に納める。そうしなければ、今でも子供がさらわれるのだと、村ではまことしやかに囁かれているそうだ。  一日の成果に満足して就寝しようかという時間、蛙の鳴き声に聞き入っていると、お風呂からあがってきた奈津が突然に提案してきた。 「ねえ、入ってみようよ。鬼女の洞穴」     
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