前編(竜は井戸に潜む)

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 川遊びについては地元の子供たちからも注意されていた。川底の石は滑るから注意すること。一人では絶対に川に入らないこと。深みに気をつけること。雨が降ったらすぐに川から出ること。それから、もう一つ、遊んでいて知らない子供が増えていても声をかけないこと。子供が川遊びをしていると、長髪で肌の青白い見知らぬ裸の少年が増えていることがあるのだという。それは水の神様で無視していれば消えるのだが、もし声をかけると、連れて行かれるのだという。何処へとは語られていない。  ばかばかしいと一蹴するには皆が真剣すぎて、その話を聞いてから暫くは川で遊んでいる子供の数が増えていないか気になるようになってしまった。そうは言っても、遊んでいて楽しく過ごしているうち忘れてしまう程度だったが。  その年も昼はだいたい地元の子供たちと遊んだ。二年生の夏休みに年上のガキ大将のケンちゃんが仲間にいれてくれてからというもの、毎年夏にだけ出会う友人達は僕を迎え入れてくれた。特に楽しみなのは川遊びだった。怖くてできなかった岩からの飛び込みだって、今は平気で楽しめるようになった。水の底で魚だって見つけられる。
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